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オトキチ日記

北朝鮮に着くまで

北朝鮮旅行記1日目

北朝鮮に着くまで

17年7月16日
3:00起床。
4:20 自宅を出てタクシーで駅へ。
タクシーの運転手に「海外ですか? どちらへ?」と聞かれて、「アジア旅行です」と答へる。
やつぱり「北朝鮮へ」とは言へないわねえ。

思ひのほか早く着いたので駅で30分ほど始発を待つ。
こんな時間なのに結構人がゐるもんだなと思ふ。

6:00 羽田空港で搭乗手続きを取る。預け入れ荷物はこれで瀋陽までゆくわけだ。
1時間ほど空港で手持ち無沙汰。なにせ遅刻だけはするわけには行かぬととにかく
早く家を出たわけだからね。

このあたりからテンションがどんどん落ちてゆくのが分つた。
「なんで北朝鮮に行かなきやならないんだ?」「なんでこんなところで一人でゐるんだ?」
数日前までの遠足を楽しみにする子供のやうな心はどこへやら。後悔が暗雲のごとく
拡がりました。
7;00 手荷物検査に向ふともうすごい行列。ゐるんだねえ、こんな時間に飛行機に
乗る人が。

8:45 関空着。搭乗手続きは羽田で終つてゐるので、出国検査だけすればいい。
初めてなので緊張しつつ何事もなく機内へ。

機内で中国入国の必要書類が配られる。
私は旅行社から印字されたものを貰つてゐたから、それでいいと思つてゐたら、
健康カードは7月から用紙が変り、かつ税関申告書はトランジットでも必要にな
つたとのこと。
事前に準備してゐた段取りが違つてゐるといふことで、気持はますますブルー
になつた。
(まあ、あとから思へば大したことぢやなかつたんだけどね)

空港上空および空港内での写真撮影は禁止とのアナウンスあり。素直にそれに
従ふ(なので、1日目は写真は全く撮らず。まあ、大連だの瀋陽だのの写真なら
規則を犯してまで撮る気はなし。それに理由は「軍事上」だらうから下手したら
どんな目に会ふかもわからないしね。今回の旅行では規則・指示にはすべて従ひ
ました)。

大連で入国手続き。
支障なく済んだのだけれど、中国係官(軍人)の態度の横柄さに驚く。
まるで刑務所の看守のやう。
なるほど日本ではないと実感。かつ、中国でこれでは北朝鮮ではどうなんだ?
といよいよブルーに。
大連空港のトイレは近代的で清潔だつたが、紙はなし(もともとペーパーホル
ダーもない)。空港でこれかい? と思ふ。

大連発。ほぼ満員だつた乗客は1/5くらゐに。
瀋陽着。
ターンテーブルで荷物を受け取る。
もし無かつたらどうしようと不安で一杯だつたので、無事自分のキャリーバ
ックを手にしたときにはへたりこむほどにほつとした。

いよいよ高麗航空のカウンターで北朝鮮の査証を受け取らねばならない。
出発ロビーに向ふ。
途中、まはりは日本語は聞えず、中国語と韓国語ばかり。ますます不安に。
話しかけてくる親父をり、タクシーの客引きだつた。「トランジット」と
言つたら素直に引き下がつた。(正確にいへばトランジットぢやないけどね)。

瀋陽空港のトイレは紙はあつたが、タンクのレバーが壊れてゐて水は流れず、
呆れ返り「知つたことか」とそのままで出た。空港でこれかよと再び思ふ。

「高麗航空の航空券を提示して税関申告所へ」とパンフにあつたが、そこと
おぼしき入口の前は黒山の人だかり。しかし中に進む人はをらず、しばらく
様子を見てゐたが、意を決して人をかきわけ奥へ進んだ。係員に航空券を見
せると「行け」と顎をしやくられて中へ。

次のゲートを抜けようとしたら紙を突きつけられて「これを出せ」と止めら
れた。そこが税関申告所だつたのね。

なんとか高麗航空のカウンターに辿り着く。5人くらゐの後ろに並ぶ。
係員は若い男性1名と若い女性2名。
これが、なんといふかまあ、陽気で明るい。
客を無視してゐるともいへるのだけれど、作業をしながら、実に良く
仲間打ちで笑ひながら喋つてゐる。日活青春映画みたいだと感心して
なんかいい雰囲気だなあと思つた。中国軍人の仏頂面と好対照だつた
から余計にさう感じられたのかも。

と、並んでゐると「××さん?」と私の名前を呼ぶ声が。見ると横に
男が立つてゐて、手には青い紙が。
おお、朝鮮の査証ではありませんか。
「はい」と受け取らうとすると何か言つてゐる。
さうか、たしか査証代7000円はここで渡すはずと、現金を渡すと男は
頷き査証をくれた。
これが査証かと眺めてゐたら男はもうどこかに消えてゐた。

「高麗航空のカウンターで受け取り」といふから何か窓口があつて事務
手続きをして受け取るのかと思つてゐたが、これではなんだかどこかの
裏通りで密売人から麻薬か何かをこつそり買つたやうで、しばし呆然と
しました。
男の身なりも制服ではなくどちらかといへばみすぼらしい私服だつたし。

搭乗手続きもなんとか完了して、いよいよ飛行機へ乗り込みます。

バスに乗り飛行機のところまで行つてタラップを上る。
これは飛行機が小さいから通常の搭乗ゲートが接続できないからだと
思ひます。

高麗航空の飛行機は左右3列ずつ。荷物入れはなるほど網棚式。
ただし本当の網ではなくて新幹線ふうの網棚。飛行機の機内と
いふより、新幹線の車内に感じがとてもよく似てゐました。
スチュワーデスは美人揃ひで応対も柔らか。ほつとします。

しかしながらとにかく暑い。エアコンは動いてゐて白い空気が見えて
ゐるほどなのですが死ぬほど暑い。ほぼ満席。日本人は私だけのやう。
と、スチュワーデスさんが団扇を配つてくれました。高麗航空の絵入り
です。嬉しい心遣ひと申せませう。

うちわ

  <帰国してから撮つた写真です。素朴な作りが物資の不足を忍ばせ、
   なほのこと心遣ひが伝はります>

機内では大洞江ビールを飲みました。
ぬるかつたけど美味しかつた。
ビールはきんきんに冷えてゐなけりゃといふ方には不満かも知れませんが、
私には美味しかつたです。

朝鮮入国の健康カード、税関書類、入国カードが配られます。
と、また書式が違ふのね。
書いてある内容は同じと思ふものの、書類が違ふといふ理由で揉めるのも
嫌、といふよりも怖い。
で、書き写さうとしたら手元の書類には「受入機関」とかがハングルで印字
してある。
これでは書き写すこともできません。
開き直つて持参した印字済み書類を提出することに決める(結果、何のお咎
めもありませんでした)。

窓の外から眺めるに山は緑で青々としてをりました。
全部禿山といふのは少なくとも過去のことのやうです。

そしてつひに平壌空港に下り立ちました。


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